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公民、私はこの科目に育ててもらった! - 畠山 創(公民)

公民講師  畠山 創

― 生徒のモチベーションを高めるための取り組みでうまくいったものなどはございますか?

  • モチベーションを高める端的な方法は、「可視化」と言われるように、確実に何らかの形で生徒に結果が見えるようにすることです。予備校では模試の成績だったりします。このため、1回1回確実に点数が上がる、平均が確実に上がっていくなど、結果での可視化ができるようにすることは、最も生徒のモチベーションを高めると思います。授業に関して生徒のモチベーションを高めるには、第1回目の授業が全てであると感じています。1回目の授業の最初の3分間で、この科目はこんなに面白い、なぜ面白いのか、などを伝えて、生徒のモチベーションを高めるようにしています。このため、1回目の授業にはかなりの準備をして臨みます。

― 1回目の授業では、先生はどんなことをされるのですか?

  • 一番相手がほしいであろう情報を出すようにします。生徒が何を一番欲しているのかを生徒側に立って徹底的に考えるようにしています。例えば、予備校生であれば、4月に始まって7月までに家庭学習で何をすればよいのか、ということに不安を感じている生徒が多いです。授業をどう聞くのかよりも、一人になった時に何をするかについて聞きたいのです。これを明確に見せてあげることで生徒は安心しますよね。センター試験の平均点や受験者数などを数字で示して見せたりもします。

― 先生は市民講座や医師会で講義を担当されることもあるとお聞きしていますが、こうした場合にはどうされるのですか?

  • 講義の最初に「相手がほしいであろう情報を出す」という点は変わりません。公開講座などでは、「合格」などの共通した目的意識がないため、タイムリーなもの、びっくりするような話題を最初に提示することが多いです。時事問題など、その日の朝に起きた重要な事件です。衝撃的な映像を3分間だけ見てもらったり、ある1枚の写真を見てもらったりした後で、講義を展開していくこともあります。

― 生徒向けの授業でも写真をみせたりすることはありますか?

  • インタビュー風景あります。例えば、パリの東駅の写真などを見てもらうことがあります。これは何なのかと問いかけて考えさせます。「美術館、郵便局、駅、カフェ」などの4択を提示し選ばせると、生徒は美術館、カフェなどと答えることが多いです。実際に東駅はナチスドイツの時代に、収容所に行く汽車がここのホームから出発したという歴史があります。こうした悲しい歴史を伝えるためにあえて先に写真を見せ、生徒に答えさせるという方法をとります。参加型の授業を行う際にはこうした方法が有効です。授業終了後に生徒の側からいろいろと質問が出てきた際には、やはり教える側としても効果を実感できますね。

― モチベーションを上げるためのキーワードは?

  • 「参加」です。いかに参加させるかという点に尽きると思います。組織でもそうですが、自分の意見や自分の一つの活動が組織に参画しているという意識がモチベーションになったりします。私の友人の言った「共創力」(生徒と教師で共に創る)という言葉が良いなと思い、しばしば紹介しているのですが、こういった空間が教育の現場にあるとモチベーションも上がるのではないかと考えています。自分たちが参加して授業ができているんだという気持ちを生徒が持てることは大切だと思います。

― 生徒のモチベーションをどう維持させていますか?

  • 回数を重ねるごとに授業の満足感は減ってしまいます。時期的に眠くなったり、モチベーションが上がらない時もあります。常にモチベーションを高めていくためには、時期の意識が大切だと思います。1学期に12回ある授業でも3回目の授業時には「もう1/4が終わったよ」、などと時間がいかに早く過ぎるのかを伝えています。2学期が始まる段階では「全体の半分が終わったよ」と伝え、常に終わる、いつまでも続かない、時間はなくなっていく、という感覚を伝えています。特に、高校3年間の一瞬一瞬の重要さについては、少しだれてきたような時期には伝えるようにしています。黒板に円を描いて、「今これだけ終わったんだよ」などと図示するようにしています。1回目の授業時にも、12回授業があるなどとは言わずに、「もうあと11回しかないよ」と言います。センター試験まで200日などとは言わず、「一緒に授業で学べる空間はあと23回しかない」などと言うようにしています。1回1回がなくなっていく、という感覚を伝えてモチベーションを維持させるようにしています。

― その他、生徒のモチベーションに大切なものはありますか?

  • 先輩談などは有効ですね。合格した生徒のノートを見せたり、一生懸命努力し、合格した生徒の紹介をすることは効果的です。私が教えたある卒業生は有名企業の面接で「我々は君がどうやって成功したかを聞きたいのではなく、失敗からどのように立ち上がることができたのかを聞きたい」と言われたそうです。苦学していた学生であり、それまでの経験を話して内定をもらったそうですが、こうした話は浪人生には響きます。「どうやって失敗から立ち上がったのか」という点を企業が見ているという話は、浪人生の境遇にも似ておりモチベーションにも繋がると思います。身近な先輩や1歳しか年の離れていない先輩の経験を伝えることは、偉人の名言を紹介するよりも、生徒の心を打ちます。ただ、こうした大切な話は生徒がつらくなる時期などを見極めて行うようにしています。

― 現場で頑張られている先生方に何かアドバイスはございますか?

  • インタビュー風景公民は、社会科学全てがつまっている科目です。私はこの科目に育ててもらったんだと思います。いろいろな出版社から出ている資料集を5冊くらい、空いた時間に読んでみるだけでも、トピックなどから面白いものがつかめると思います。これを一度、頭の中で整理し直して、授業中2分などと時間を決めて話すことで、生徒に興味を持たせることができると思います。自分が感動した時などは長い話になってしまいがちなので、常に自己を客観化し、時間を決めて話すことは大切だと思います。やはり、教科の専門性から知的なものを引き出す授業が有効ではないかと思いますね。

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聞き手:吉田