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2019夏期「授業法研究ワンデイセミナー」質疑応答集

2019夏期「授業法研究ワンデイセミナー」
受講者から出た質問に担当講師が答える「質疑応答集」を公開!

2019年夏期 授業法研究ワンデイセミナーの中で、受講者の皆様からいただいたご質問に対して、担当講師がお答えします。共通の疑問を持った現場の先生方に広く共有いただければ幸甚です。
※いただいた全てのご質問にはお答えできませんが、どうかご了承ください。

本部校出講日 科目 担当講師
7/27(土) 生物 鈴川 茂
倫理政経 畠山 創
小論文 土生 昌彦
7/28(日) 化学 西村 淳矢
物理 中川 雅夫
地理 宮路 秀作
8/3(土) 英語(1) 富田 一彦
文系数学 山本 俊郎
現代文 船口 明
日本史 重野 陽二郎
8/4(日) 英語(2) 福崎 伍郎
理系数学 湯浅 弘一
古文 望月 光
世界史 佐藤 幸夫

※準備のできたものから、順次掲載を行っております。
現在準備中の講座につきましては、今しばらくお待ちください。

2019夏期 授業法研究ワンデイセミナー「質疑応答集」


鈴川 茂
生物
【7/27(土)実施】

他科目との科目横断的な問題を授業で扱いたいと考えています。良いアイディアがありましたらご教示ください。
以前、世界史の先生との合科目で、「生物学史」および「免疫学」を軸にして授業を計画させていただきました。その授業の中で歴史の流れを現象論で解説していく楽しさを体験させていただきました。また、ダーウィンやリンネなどの学者を生物学とは違った側面で勉強する楽しさも知ることができました。過去には、英語の先生とレイチェル・カーソンの「沈黙の春」を題材とした授業を行ったこともあります。また、マツヨイグサなどの「植物」を共通題材として古典と繋げることも可能であるかと思います。このように理系科目以外の科目との横断型授業を想定していくことで、どんどん幅が広がっていくと考えられます。
東大のようにリード文が長く、様々な切り口で考える必要のある問題を生徒が解けるようにするにはどのように指導すればよいでしょうか。
本セミナーでもご紹介したような、難関大や医系入試の過去問の中でも目新しい題材を扱った問題をどんどん課題として与えてはいかがでしょうか?新傾向の実験考察問題における解説授業では知識の補足の必要性が低いため、考察力の養成に専念できると思います。そして授業の際には、例えば「実験1と実験2からはどのような考察が導かれるか?」、「その考察と実験3から何が言えるか?」などを1つ1つ生徒に問いかけていくことで、生徒自身の読解力および思考力が自然と磨かれていくと思います。
記述や論述問題の指導をする際のコツをお願いします。
私は、知識論述問題を毎週課題にしております。知識論述を訓練させることで、短時間で要点を絞る訓練の他、「主語と述語の関係をしっかりと明記する」、「漢字間違いに注意する」など、基本的な論述力も養成することができます。その際私は、1題10点満点で採点し、「なぜ減点されたのか」を生徒に明示するようにしております。はじめは各生徒が受験する大学の過去問の論述をその都度添削する形式をとっておりましたが、生徒ごとに問題が異なるとルール設定の境界線があいまいになってしまい、生徒どうしの情報共有の効率も悪くなってしまうため、すべての生徒に共通した問題を課題として出しております。
オペロン説をわかりやすく説明するにはどうすれば良いでしょうか。工夫しているのですが、生徒の顔を見ると難しく感じているようです。コツがあればお願いいたします。
私はまず、「調節遺伝子」、「プロモーター」、「オペレーター」、「構造遺伝子」の順番をゴロで生徒に覚えさせます。その後、「調節遺伝子=社長」、「プロモーター=社員(新人)」、「オペレーター=部長」、「構造遺伝子=社員(ベテラン)」、「ラクトース(の代謝産物)=会長」というように、役割分担の設定を行い、「社長(調節遺伝子)がいるときは部長(オペレーター)が社長に気を遣って指示を出せず、結果的に社員たち(プロモーターと構造遺伝子)も部長の指示を受けずにはたらけない」、および、「会長(ラクトース)がやってくると社長が会長とともに会社の外へ行ってしまうので、社員たちは部長の指示のもとではたらけるようになる」といったように、例え話で説明しております。
大学入学共通テスト対策のための授業をしたいのですが、具体的にはどのような指導をすれば良いでしょうか。
大学入学共通テスト対策では、ただ正答することより、正答に至るまでのプロセスに注目していくことが大切です。そのために、「なぜ」そのような考え方になり、「なぜ」このような表記をする必要があるのかを、リード文と解答とのつながりを強調して指導していきます。実際には、私の解答に至るまでの思考回路の順番をすべて黒板に明示していくことをなるべく心掛けております。授業では、生徒に直接、解答に繋がるポイントとなる箇所に色ペンでチェックをさせて、「ここから何が言えるか」を明示し(そこに①などの番号や※などの記号を生徒に書かせます)、次に、また別のポイントとなる箇所に、「①や※から何が言えるか」を書かせます。このようにして、思考していく上で「考えていく順番」や「考え方」を生徒に明確に伝え、私の頭の中のアルゴリズムをなるべく具現化した板書を完成させていきます。


畠山 創
倫理政経
【7/27(土)実施】

いまから「公共」に向けて準備できることがあれば、アドバイスをお願いします。特に共通テスト(確定ではありませんが)や授業展開についてご教示いただけますでしょうか。。
基本的には、「現代社会」が「公共」になることを考えると、現在の「倫政」に思考力や判断力、ディベート・模擬裁判・模擬国会などの表現力が加わっていくと考えられます。最近のセンター現代社会の特徴に、倫理分野の拡充が挙げられます。したがって、倫理のウェイトが若干増えるものと考えられます。この意味で政経担当の先生が多いことから、倫理の教科指導ができるようにしておくとよいでしょう。最初の「公共の扉」という箇所が注目を集めているのですが、ここについては抽象的な部分が多いのが実情です。
倫理で日本思想を指導する際に、源流思想や西洋思想と勝手が違い、内容の濃い授業ができず苦戦しております。アドバイスをお願いします。
まず資料集や図解シリーズで、思想間の影響・対立関係を捉えてください。また「できるだけ対立を避け融和をめざす文化」、例えば「古代の八百万神」、「聖徳太子の和」、「本地垂迹説」など対立ではなく融和を重視する先人の知恵に気がつきます。どうしても日本史の文化史に走りがちなのですが、センター試験のリード文を読むなどして、思想とその倫理的背景を見出してください。またセンター対策であれば、ある程度暗記と割り切り、単語カードを作ることを生徒には勧めています。
現代の諸課題を指導する際に、統一性や一貫性を持たせることができず、悩んでおります。アドバイスをお願いいたします。
この分野は、現代に起きている諸問題を人類がどう解決していくのか、がテーマです。大きな流れは、「資本主義の急速な発展や経済活動の変化が、歪な人口動態や、新しい家族の形態出現、新しい技術や価値観の出現」へと繋がります。まずこうした「諸行無常」ともいうべき事実を抑えた上で、なにが望ましいのかを探求していく分野です。例えば「尊厳死」に特定の答えがあるわけではありません。よって指導方法は、「問題と事実」→「原因・統計」→「解決策の提示・生徒による発表や討論」→「教員のまとめ・生徒の意見の紹介とともに、或いは解決に乗り出している事例の紹介やVTRの視聴(NHKのクローズアップ現代や新聞などを見せる)」という流れが良いと思います。
勤務先が複数のコース(就職~難関大志望)に分かれており、全コースを指導しているので生徒のレベル差に戸惑っています。アドバイスをお願いします。
私も高校で授業をすることがあるので同じ悩みを経験しています。結論から言うと大学のレベルはとにかくとして「受験用」と「教科用」は分ける事が望ましいと思います。「教科用」については基本事項の定着と、教科への興味を引くことを目的とします。「受験用」については放課後や選択演習、夏期・専門講座を設けて、発展事項の講義と演習・解説を行うことが望ましいと思います。受験対策は講義だけでなく「演習指導」に大きなポイントがあります。センター試験であればセンター試験を分析すれば良いですし、私立大学であれは、その過去問から出題分野を学部ごとに特定すれば良いと思います。
受験を意識すると倫理政経はどのような順番で1年間指導していくべきでしょうか。なるべく効率的に行いたいと考えています。特に何を後半に、最後に指導するべきでしょうか。
まず最大のモチベーションは「模試での成績が上がっている」という数字での実感です。これに勝るものはありません。したがって、私は倫理政経を並行して指導しています。具体的には各週ごとに模試の範囲を意識して行います。政経は他教科と異なり、分野ごとの系統的な理解がさほど要求されません。例えば、源流思想と江戸時代の思想に系統的な関係を見出すことは難しいでしょう。したがって受験であればある程度割り切って、教科書の項目順に模試を意識して指導しています。ただし、国際政経分野については、後回しになることで定着できず失点するので、2学期の冒頭や、夏期講習で先取りするようにしています。また生徒には、夏の終わりまでに全範囲を参考書などで軽く予習し、二学期以降は復習的に講義を聴きながら演習を強化するように指導しています。まずは10月の模試までに、素点で80点以上取らせることを目標に指導してみてください。


土生 昌彦
小論文
【7/27(土)実施】

志望動機の書き方を指導する際に、意識すべきポイントは何でしょうか。就職志望の生徒も指導しておりますので、そちらでも有効なアドバイスをいただけますと幸いです。
志望動機については、まず冒頭で志望理由を一言で述べ、残りの字数でそれを詳しく説明するように指導しています。最後に志望動機を書く生徒が多いので、「重点先行主義」で書くようにアドバイスすることが多いと思います。また入学への「熱意」を伝えるためには、単にパンフレットの内容を引用するだけでなく、様々な手段で志望校に関する情報を主体的に集め、それを志望動機に盛り込むように指導しています。就職志望の生徒にも以上のことは当てはまると思います。また「あまり書くことがない」という生徒には、「志望学部の定義(経済ならば「経済とは何か」、法学部ならば「法とは何か」など)」に関する新書に目を通し、自分なりの定義を作って、それを志望動機に盛り込む方法もあるというアドバイスをしています。
小論文に関して、大学別や最近の出題傾向のようなものはあるのでしょうか。
小論文に関しては、各大学ごとの出題傾向を踏まえる対策が不可欠です。その場合、1)学部と出題されるテーマとの関連性の有無、2)制限字数と試験時間との関係、3)出題傾向が比較的変わりやすいか、ほとんど変化しないか、以上の点を5~10年間の過去問を見て、分析するように生徒には伝えています。小論文の全般的な傾向としては、比較的長文の課題文を読ませる「課題文型小論文」が全体の6割程度、文系では7割程度、出題されているので、課題文の主題を的確に要約する読解力(現代文の力)が必要になります。短い字数の「テーマ型小論文」では、与えられたテーマを的確に定義する練習を普段から行う必要があります。また、近年、グラフや表などを用いた「統計資料型」の出題が増加傾向にあり、それらの資料を簡潔、的確に文章化する能力も必要とされています。
個別の添削指導はどの程度の頻度で行うのが良いでしょうか。また効率的に指導するコツがあれば、教えてください。
添削指導の頻度はなるべく生徒自身に決めさせるように心がけています。それが生徒の学習意欲、主体性を養うことにつながると考えているからです。一般的には、一週間に1、2回というケースが多いように思います。生徒にはなるべくコンスタントに小論文、あるいは要約を書くように指導していますので、一週間以上は空けない場合がほとんどです。指導のポイントは、1)一回の添削ではあまり欲張らず、その生徒の直面している課題を一つに絞る、2)次回の小論文でその課題をどのように克服するか、なるべく具体的にアドバイスする、3)問題点を次々と列挙するような指導は生徒の自信を喪失させるおそれがあるので、極力一つに絞り込み、以前の課題が克服できていれば積極的に誉める。以上の方針で臨んでいます。
最初の書き出しに困る生徒が多くいます。土生先生はどのようなアドバイスが有効だと思われますか。
小論文の書き出しにあまり凝る必要はないと考えています。課題文型であれば、「課題文の筆者は~と述べている。これに対して私は……と考える。なぜならば」というシンプルな書き出しでいいとアドバイスしています。テーマ型であれば、冒頭に自分なりの簡潔な定義を示し、それに沿って意見を展開していく。それで十分だと思います。むしろ重要なのは、その後の段落構成や主題の明確さ、論理的なつながりにあるので、その点については、メモ等を使って十分に考えることが必要だと指導しています。書き出しは出題意図を踏まえたシンプルな形が望ましい、「シンプル イズ ベスト」というのが私の考えです。
生徒の小論文を見ると、論理を深めていくことができず、理由を浅く列挙するに留まってしまうものが多くあります。次の段階へ引き上げるために、どのように指導すればよいでしょうか。
表面的な感想や意見を「そして」、「また」という接続語を使って列挙していく文章はたしかに多く見かけます。これらの生徒はまだ「作文」を書く癖から脱していない場合が多いようです。こういうケースでは、1)論点を一つに絞ること、2)自分自身で与えられたテーマに即して問いを作り、それに自分で答える。さらにその答えの中から次の問いを作り、それに答えることが大切だ、という指導をしています。1については、小論文は思考力を競うゲームであり、それは海岸で行う穴掘り競争をイメージすればよい。穴掘り競争で穴を3つも4つも掘っていては勝ち目はない。当然穴(=論点)は一つに絞るべきだと説明しています。2については、「問い→答え→その答えの中から作る問い」という流れのうち、二番目の問いを作ることが論理的な意見を作る上で最も重要だという指導をしています。


西村 淳矢
化学
【7/28(日)実施】

難関大志望の生徒に発展内容を指導する際に、どれを授業で扱い、どれを生徒の自主性にまかせるかいつも悩んでしまいます。先生はどうされていますか。
難関大の入試問題には、いわゆる「教科書の発展事項」に掲載されている内容を題材にして出題される問題がいくつか見られますので、「教科書の発展事項」をテーマとした問題を扱い、解説の際にそのテーマについて触れるようにするのが良いかと思います。具体的には、水銀柱、ラ・ウールの法則、ファンデルワールスの式、リチウムイオン電池、アレニウスの式、アミノ酸の等電点の算出などは、難関大志望の生徒対象に扱っておくのはよいと考えます。
記述問題を指導する際に、意識すべきポイントは何でしょうか。
記述問題には必ず書くべき「キーワード」というものがあります。記述問題の指導を行うときは、そのキーワードが書けているかどうかの確認から始めていくとよいと思われます。日本語が上手くても、字数が適切でも、書くべき内容が書かれていなければ当然得点はもらえません。また、大学側はかなり多くの答案を採点しているため、そのキーワードを含んでいるかどうかを採点の基準としている可能性が大いに考えられます。記述問題を扱う際にはその問題において必要なキーワードを考えさせ、そこから文章を組み立てさせるのが良いと考えます。
実際に実験をすることはできない予備校で、先生はどのように実験をテーマにした問題の解説をされていますか。
実験に関しては、入試問題でよく出題されるテーマについて解説しています。特に、有機分野の実験に関しては、入試問題にも出題されますし、一度扱っておかないと解答することができない操作もありますので解説するようにしています。特に「エステルの合成」、「ニトロベンゼンおよびアニリンの合成」に関しては、合成後の事後処理の操作の意味も含めて詳しく説明するようにしています。ただし、有機分野を初めて学習する時にはそこまで詳しく話さず、入試問題演習で問題として出てきた際に説明をしています。当然、理論分野でよく出題される「滴定実験」は初めて学習する際に詳しく解説しています。
生徒に思考力・判断力・表現力を身に付けさせるためには、どのように問題に取り組ませ、解説すればよいでしょうか。
思考力・判断力・表現力といいましても、基本的には「知識の組み合わせ、利用する」ことができるかどうかだと考えております。従って、まずは各単元の基礎事項をしっかり頭に入れさせることが重要になります。ある程度知識をつけた後に、問題演習を繰り返していけば、「知識の出し入れ」を行うことになりますので、複数の段階を踏んで考えるような問題であっても、きちんと対応できるようになるでしょう。また、研修でお話ししたような問題を扱い、「ここはこのように考えるんだよ」、「ここではこの知識を利用するんだよ」と解説の際に付け加えてあげることで、その考え方を自分のものとし、解答できる力をつけるものと考えます。
化学として、どこまで天然高分子(糖、タンパク質、DNA)を教えるか悩んでおります。アドバイスをお願いいたします。
天然高分子化合物に限らず、「入試問題によく出題される知識」を中心に教えていくように授業を組み立てています。問題集などに掲載されている問題をいくつか解いてみて、教える・教えないの線引きをしていくのが良いかと考えます。例えば、DNAに関してであれば、糖や塩基の種類などを暗記させるのは当然のことですが、「塩基の構造を見て名称を答えさせる」、「水素結合する様子を図示させる」などの問題も出題されていますので、最終的にここまで解答できるような力をつけさせておくべきだと考えます。


中川 雅夫
物理
【7/28(日)実施】

思考力を要するハイレベルな問題へのアプローチを授業で扱いたいと考えています。どのように指導していけば良いでしょうか。
思考力を鍛えることはなかなか難しいものです。じっくり問題に向き合ってしっかり考えさせることが大切と言われますが、なかなか効果的な授業は展開できません。授業のポイントは、生徒に何を考えれば良いのか、具体的に課題を明示することだと考えます。思考力を要する問題といっても、そのほとんどが通常の物理の問題の流れで作られています。その流れを追って、通常の方法で対応できるところと通常の方法だけでは対応できないところを指摘すると、生徒にわかりやすくなるようです。何を解決しなければならないのか、問題意識が共有できれば、教える側としてはアドバイスしやすくなりますし、生徒には考えるべき課題がはっきりします。
演習形式の授業を考えています。実施する際のポイントを教えてください。
一般論としては、演習により鍛えたい力を絞り、その目的に合った教材を用意することがポイントになります。しかし、実際には、演習の授業を行う際には、参加する生徒の実力、目標などに差があることが多く、なかなか演習の目的を絞ることができないものです。そこで、すこし漠然とした目標を設定し、実際に演習を進める上でできるだけ各個人に合わせた指導をするのはどうでしょうか。具体的には、「計算を上手く行う」という演習の目標を立て、演習時にはそれぞれのレベルに合わせて、「辺々足し算する」「辺々割り算する」などの基本的な計算法や、「できるだけ共通なものを括りだして計算を進める」など少し応用的な計算法を指導して、全体講義の際に一番上手いと思われる方法を示すというものです。
考査問題の作り方のポイントをお願いします。
授業でこれは押さえて欲しいと考え、しっかり定着させたいと思われる知識を中心に、物理的思考の流れを意識して作成することが重要です。単に授業で身につけた知識を試すだけではなく、その問題を考えることによって、さらに整理ができ、理解が少し深まるような問題が理想的です。難しい問題にする必要はありませんから、穴埋め誘導式で、身につけて欲しい考え方がわかる問題を作成すると、授業の補助効果が大きくなります。「この問題を考えてよかった」と生徒が感じる問題ができれば最高です。ただ、そのような力作ばかりで構成すると学習の割に点が取れない生徒が多くなってしまうことがあり、学習の達成度を評価するにはあまり適当ではなくなります。そのため、知識の確認や式の運用レベルの基本問題も入れて、バランスを取る必要があります。
中堅大志望の生徒を担当しています。このレベルを指導する際のコツがありましたら、お願いいたします。
中堅レベルの大学の問題では、解法パターンに従えば内容的な理解が不十分でも点が取れる問の割合が高いことがあります。そこで生徒は物理を理解するのではなく、解き方を覚えて対応しようとします。また、解法パターンを覚える方が初めのうちは確かに得点力の伸びが大きくなります。しかし、物理の教員としては物理的な力をしっかり身につけて欲しいと思います。そのため、生徒は先生の正攻法の授業を役に立たないと判断してしまうことがあります。そこで私は正しい理解の邪魔にならない範囲で、解法も教えます。さらに、物理の力を身につけることにより、もっと応用性が高く上手く 解ける方法があることを示すようにしています。
原子分野に時間を割けないことが悩みです。問題選定の注意点や効率的な指導法についてアドバイスをお願いします。
原子の分野は、「光の粒子性と電子の波動性」「原子の構造」「原子核の崩壊」「原子核反応」に大別できます。これらを完璧に扱うとするとかなり時間がかかります。しかし、入試対策を考えても、他分野の学習に時間を割くほうが効果的です。少ない時間で原子の範囲の重要点を押さえさせるには、実際の入試問題を意識するのも一つの方法です。入試でよく出題される項目は、物理的にも重要度の高いものが多くなっています。具体的には、「光の粒子性と電子の波動性」であれば「光電効果」、「原子の構造」であれば「水素原子のボーアモデル」が頻出です。このように入試でよく扱われている項目に絞り、それに肉付けする授業を行えば、原子で身につけさせたい重要な概念を講義できると思います。


宮路 秀作
地理
【7/28(日)実施】

定期考査や実力考査の問題づくりに苦労しています。少しでも良いものにしたいと考えておりますので、アドバイスをお願いいたします。
「少しでも良いもの」ということから、何を目指したら良いのか、先生ご自身も悩んでおられるように思います。きっと「思考力」を問う問題こそが良問であるとお考えになっていて、だからこそ、そういった問題をいかにして作っていけば良いのかを課題とされているのだと思います。採点は大変ですが、いっそのこと「地中海式農業について400字で説明しなさい」といった、抽象的な問題文で構成される実際の入試問題を課してはいかがでしょうか。国語力、知識の量、因果関係など、様々なことがあぶり出されてきます。
担当している生徒の中には、学習意欲の高くない生徒もいます。どうすれば彼らを授業に引き込めるでしょうか。
過剰に生徒に迎合しては面白い授業はできません。人は賑やかなところに興味を持って寄っていきます。クラス全員が学習意欲が低いわけではないと思いますので、まずは高い生徒に向けて内容の濃い授業をしてみてください。そこで盛り上がってくると、意欲の低い生徒も興味をもってくるかもしれません。
日本史が専門の教員です。自然地理を指導する際に重要なポイントは何でしょうか。
人間生活というのは自然に規定されて特徴付けられます。暑い国では半袖を着るでしょうし、寒い国では逆もまたしかりです。そして、人間は自然を改変することで社会を作ってきました。このバランスが崩れると環境破壊が生まれます。「衣食住」は自然環境によって変化するといったところです。こうした人間生活との関連性を明確にすることで、日常生活の話題に繋がり生徒たちは興味を持ちます。その土台として自然地理を教えているという感覚が一番大事だと思います。自然地理を深掘りすると、それは地学ですから。
日本地誌の指導法についてアドバイスをお願いいたします。何か例を挙げていただけないでしょうか。
日本地誌の内容は多岐にわたりすぎて、大変難しいです。結局は、「何をゴールとするか?」によって取り上げる内容が変わってきます。私ならば、「地形」、「気候」、「農林水産業」、「エネルギー」、「工業」、「貿易」、「人口」、「都市」の単元を扱います。この中で単元ごとに優先するものをいくつか決めていきます。つまり、「闇雲に何をどう教えたら良いか?」ではなく、「この単元では、ここを重点的に教えたい」というものを先生ご自身で決める必要があります。まずはそうやって深掘りしてみてはいかがでしょうか。その中で他のつながりが見えてきて、景観ができてくると思います。そうなっていけば教える方が面白くなってくると思います。
地域調査を授業で扱う場合は、どのように展開すれば良いでしょうか。恥ずかしながら、生徒に教科書を読ませて終えてしまったことも過去にあります。アドバイスをいただけますと幸いです。
地域調査については2つの種類があります。一つは「地域調査の手順について」、もう一つは「誰かの地域調査による結果報告を分析する」です。前者は教科書を丁寧に読み込んで、常識の範囲で手順が踏まれていく過程を教えることになります。後者は、「分析力」が問われているのであって、こればっかりは生徒たちに慣れてもらうしかありません。特にセンター地理においては後者が主眼となって出題されます。過去問を使って、繰り返し解説していくことが重要だと思います。


富田 一彦
英語(1)
【8/3(土)実施】

英語4技能が叫ばれ、学校内にも「英語の教員=喋れなければならない」といった雰囲気があります。自分自身は、正直会話は難しいと考えており困っております。英会話及びその指導に関するアドバイスをお願いいたします。
セミナーでもお伝えしたとおり、会話は難しいですよ。プロトコルに従ったやり取りなら少し訓練すれば問題はありませんが、相手の発言に当意即妙の返事をし、かつ笑いまで取るとなったら、よほどの手練でなければ難しいです。ですから、まずは「書ける」ことを重視なさってください。書けないことは話せないからです。例えばすでにネイティブの先生が校内におられる場合、まず筆談から始めましょう。ちゃんと伝わる内容が書ければ、先方は書く人の「知性」を認めるようになります。そういう段階を経て、ご自分でも勉強を続ける姿勢を見せることが、実は「会話」指導の一番良いやり方なのではないでしょうか。「教える」ことはできなくても「学び方を見せる」ことはできると思います。
富田先生が「文法の中でもここは生徒が理解しにくく注意が必要」と考えるのはどの部分でしょうか。また、その部分を富田先生はどのように指導されますか。
英語と日本語の基本論理が異なる部分ですね。一番典型的なのは「受け身」でしょう。「れる・られる」と英語の受け身は本質的に全く異なるものです。英語のことを英語の原理やルールに従って考える、というのが実は「複眼的思考」の基礎としてとても大切なことです。先日のお話の中ではYes, Noのことで同じようなお話をさせていただきました。「肯定・否定」と「同意・不同意」は内容が全く異なるわけで、後者の論理で前者を考えるのは不可能です。でも、そういう正しい反省をせず、「はい・いいえ」と"Yes/No"を無理やり関連付けようとすれば、何も理解できないまま終わるでしょう。
中高一貫校で英語を教えています。6年間かけて生徒を指導することができるのですが、体系的な英語指導を実現するにはどうすれば良いか、アドバイスをお願いいたします。
問題解決のプロセスを考えることから逆算してみましょう。問題を解決するには①発見→②知識→③判断の繰り返しが必要です。ここをまず理解しないといけません。もちろん「知識」は必要なのですが、そこばかりを重視しすぎてはいけないわけです。6年あるのであれば、最初に「知識」を与えましょう。知識には二種類あって、いわゆる英語の基本ルールとそれぞれのパーツに当たる単語です。基本ルールはまず文法で、単語で重視するべきなのは動詞の文型でしょう。もちろん最低限必要なものの名前(名詞)や性質の説明(形容詞)も必要です。基本的な文型で、基本的な単語を使って文が書ける・読めるようにします。2年位かけてもいいと思います。次が「読む・書く」、つまりルールと知識の運用の中で「観察力」を磨くことです。いちばん大切な「発見」の能力を高めるためです。最後は「解く」ですね。発見と知識を組み合わせて、正しい判断に至る方法を研究してもらう、というわけです。
指導要領改訂や外部試験導入など、変化する英語教育の流れに対して戸惑っています。アドバイスをお願いします。
お気持ちはよくわかります。スタンダードやゴールを動かされたら戸惑いますから。ただ、英語自体はもう200年以上もほぼ変わらない文法構造を維持している極めて構造強固な言語です。その基本を常に見据えて自ら学び、それを伝える工夫をしていけば、小手先の試験技術の変化に惑わされる必要もなくなるはずです。
現在、過去に品詞や文型をきちんと習わずに進級してきた生徒を担当しています。こうした生徒たちを指導する際にどのような工夫ができるでしょうか。アドバイスをお願いいたします。
予備校で出会う受験生の殆どがそういう状態です。ですから私は1学期の特に前半は、テキスト進度よりも優先して、徹底的に品詞や文型の話をします。ただし、それをなるべくコンパクトで、例外が少なく、かつ融通がきくように体系付けるように心がけています。何年か前のセミナーでお話したことですが、教えることに「必然性」と「再現性」があるかどうかが問題ですね。そのような「英文法」をより良く伝えるためには、まず先生方ご自身がどのように英文法を理解されているか、自らに問いかけていただきたいと思います。


山本 俊郎
文系数学
【8/3(土)実施】

受験対策の演習授業を行う場合、問題構成や授業進行の注意点はなんでしょうか。
私が常に意識しているのは、一回の授業でまとまりがある話をしようということです。50分の授業の中で様々な話をしたい先生方のお気持ちは十分わかるのですが、生徒の立場から考えると、1問1問が独立していると、その授業で先生が何を言いたかったのかがわかりにくく、実際に問題を解く過程で理解できることが薄くなります。私は極力テーマを設定して、A⇒B⇒C⇒というように、少しずつ難しい問題が並ぶように構成します。数学が得意な生徒はどんどん先に進める利点もありますし、数学が苦手な生徒を把握するのも容易です。また苦手な生徒はAやBを考える中で計算の仕方や発想の手順を認識していくので、50分の授業で確実に得るものが増えていくように思います。
高3生に数Ⅲを効率的に教えるには、どのような点に注意すれば良いでしょうか。(文系数学ではないですが、せっかくの機会ですので質問します)
個人的な意見ですが、効率という観点であれば、1学期中に関数の極限⇒微分計算⇒微分とグラフ+並行して積分計算⇒積分と面積 の順で扱うのが良いのではないでしょうか。私が担当している基礎レベルの数学Ⅲの授業では、1学期中に、関数の極限⇒微分計算⇒分数関数のグラフ⇒無理関数のグラフ⇒三角関数のグラフ⇒指数対数関数のグラフ⇒積分計算⇒分数関数のグラフと面積⇒無理関数のグラフと面積⇒三角関数のグラフと面積⇒指数対数関数のグラフと面積というように進めています。授業では合成関数の微分が伴った問題を毎回含めながら、微分計算の徹底と積分計算の着眼点を意識して話をします。2次曲線と複素数平面は夏期講習から2学期にかけて少しずつ忘れそうな頃に前回のテーマを確認しつつ、新しい話をするようにしています。
数学がやや苦手な生徒たちを担当しています。どのような指導が有効でしょうか。アドバイスをお願いします。
苦手な場合、まず個々の学力を正確に把握することが必要だと思います。そのうえで受験学年の場合についてお答えします。理系の生徒の場合、多くは平方完成、不等式の解法、三角関数の公式の使い方と記憶、指数計算、対数公式の正確な運用意識、増減表の符号の決め方から固めていくのがいいと思います。ベクトル、数列、確率なども重要ですが、まず理系としての知識を持たせることが自信につながります。文系の生徒の場合、1つ1つのテーマを得意にさせることで、次第に計算力や勉強の仕方が身につきます。因数分解ができるようになったら、三角形の形状問題で因数分解を応用させるとか、等差数列・等比数列が分かったら、そこで連立方程式の練習をさせるなどの構成を考えられるといいのではないでしょうか。
授業内容がなかなか生徒たちに定着しません。アドバイスをお願いいたします。
確かに授業内容は生徒に上手に伝わらなかったり、なかなか定着させられないこともあります。そのような場合に私が常に意識しているのは、50分のなかでどうしても伝えたいことにしぼった授業を行うことです。例えば、ベクトルの問題であれば交点を求められなければ、ほとんどのベクトルの問題は解けないことが多いですよね。なので交点の求め方に焦点をあてた授業であれば、sとtを使って交点を表す理由も詳しく板書し、一度丁寧に解説した後、類題を数問準備し、必ず生徒に解く時間を与えて使い方を練習させ、生徒の解法をチェックしながら理解度を把握したのち、数問のうちの1問を再び解説することで、生徒の理解を確実にするようにしています。このスタイルですと多くのパターンは扱えませんが、定着してくれる生徒の数は増えていきますし、自力で解ける楽しさを感じてくれることが多いようです。
授業は問題ないのに、いざ試験となると式や解法がわからなくなる生徒がいます。どのように指導すれば良いでしょうか。
授業で理解してさらに家庭で傍用問題集を用いて復習をしている生徒でも、試験の時に思うような結果を出せないケースは多く見られます。また定期テストの前に慌てて問題集を一通り解いた生徒の場合、試験問題を見てどの解法が適切か混乱してしまうことも多いですよね。前者の場合は、授業の進め方を工夫する必要があると思います。私はそれぞれの解法の違いを授業の中で一つ一つ見せて、その違いを意識しながら傍用問題集を解いていくようにアドバイスします。こうすることで生徒は復習の仕方を身につけつつ、問題の形の違いを認識するようになります。後者の場合は、試験一週間前の授業中に基本となる形を教科書・問題集から指定して、まずそれを確実に準備するように指示し、定期テストで出す様々な問題の中から自分が解ける形を見つけさせることから始めるようにしています。こうすることで必要最低限の解法を定着させることができます。


船口 明
現代文
【8/3(土)実施】

授業中でALやICT活用を考えています。船口先生がご存知の成功例を教えていただけないでしょうか。
学校の状況や生徒達の志望等によって様々な成功例があるため、簡単には説明できないのですが、共通しているのは「ALやICT」を、目標達成のための「手段」としている点だと思います。逆に、うまくいっていない学校での事例のほとんとは、ALやICT「それ自体が目的」になっている傾向が見られます。多くの事例報告からも明らかなように、ALやICTは「諸刃の剣」です。「手段」が「目的」になってしまわないように注意することが大切なのではないでしょうか。
現代文を担当しています。授業の作り方についてアドバイスをお願いいたします。特に私が現在担当している中位層の生徒達にとっては、国語はなかなかやる気の出にくい科目でのように思われます。生徒のモチベーションを上げる方法についてもアドバイスいただけますと幸いです。
質問事項がかなり広範囲にわたるもので、文面での回答は難しいのですが、授業の組み立てに絞って回答させていただきます。大切なのは「毎回の講義にはっきりした目標を一つ設定する」ことではないでしょうか。一般的な授業では、「素材文を解説する」ことが「目的」となってしまった結果、一回の授業で「複数のポイントを挙げて」いる場合が多いと思います。これでは「今日何を習ったのか」「何ができるようになれば良いのか」が明確になりません。ぜひ、「一講義一目標」で授業をデザインされることをお勧めします。
教科書を使って大学入試二次試験レベルの学力を身につけさせるにはどのような指導をすれば良いでしょうか。
どの「教科書」をお使いかによって異なりますし、「二次試験」というのもどのような大学を意識されているかによって全く異なりますが、現代文ができるようになるポイントは、文章の〈構造把握〉と〈知識習得〉ですから、①先生の側が「二次試験の問題(どのレベルの構造把握が求められ、どんな知識を知っておけば良いのか)を熟知」する→ ②「そこから逆算して毎回の授業を構成する」ことが重要かと思います。
普段は高1生や中学生を指導しています。低学年の指導、特に導入時期の教材はどのようなものが良いでしょうか。アドバイスをお願いいたします。
現代文学習の焦点は〈論理の把握〉と〈知識の習得〉です。まずは一年間で「何を」「どのくらい」できるようにしたいのかを明確にしたいですね。その上で、〈論理の把握〉を焦点にするにせよ、〈知識の習得〉を目的とするにせよ、①各回の授業の焦点・目的が明確になっている→②その焦点にあった文章の選択、ということではないでしょうか。各学問の「入門書」を名だたる「大家」が執筆してきたことからも明らかなように、何事も入り口こそ大切だと思います。頑張ってください!!
受験学年を担当しています。二次試験対策の指導をしていると、何となく分かってはいるものの、記述してまとめることができない生徒が多くいます。改善するためにはどのような指導をすれば良いでしょうか。
「なんとなく」「だいたい」読めているから書けないのだと思います。「きちんと」「整理して」読めないと、記述は書けないのだということを理解させてあげてください。最近は「なんとなく読めていればOK」という大きな勘違いをしている生徒が結構います。しかし「なんとなく=いいかげん」ですから、そのまま書くと「適当に大事そうなポイントをつなぎ合わせる」書き方になり、永遠にそこから脱却できません。


重野 陽二郎
日本史
【8/3(土)実施】

授業で論述を扱う場合のアドバイスをお願いします。①教師がどのように準備して、②生徒にどのように指導するか、それぞれのポイントをご教示いただけないでしょうか。
論述問題については、いかに設問の題意を踏まえて解答作成を行うかがどの論述問題にも当てはまる視点ですが、その前提となる最低限の知識の習得は不可欠です。そのため、日ごろより教科書の精読を勧めながら、知識を吸収させた上で論述指導を行っております。私が代々木ゼミナールで担当しております論述授業では、まず準備として、①大学入試問題を題材に、テーマを確認した上で、その設問を解くにあたってどのような知識が必要なのかを教科書比較を通じて内容確認します。その際、出来るだけ関連内容も確認しておきます。そして、実際の指導として、②生徒に対し、設問のテーマに必要な視点および知識は何かを問いつつ、それを生徒指名を通じて明確にした上で、最終的にはどのような内容を論述すればいいのかについて指導しております。また、市販の論述問題の解答についても出来るだけ参照して参考にするよう指導しております。
経済史(特に「土地制度史」や「金解禁」)の指導法で悩んでいます。アドバイスをお願いします。
経済史の中でも「土地制度史」や「金解禁」などのテーマ史は、日本史選択者を悩ませる最も重たいテーマ史であり、また教える側の理解度が試されるテーマ史でもあります。私が経済史を扱うにあたり、特に心がけている点は“しくみが把握できるような説明につとめる”ということです。例えば、「土地制度史」のなかでも特に難解な荘園史については、土地制度の構造(しくみ)ができるだけ把握できるような説明を心がけております。その際、複雑化する土地の構造を出来るだけシンプルに捉えられるよう、図説資料集などを参考にした図を描いて説明するなどして工夫するようにしています。特に古代の荘園史においては、“主役は「田堵(名主)」である”といったように、有力農民の動きを軸においた土地制度の眺め方をすることによって、誰の支配を受けているのか、貢納物は誰に納めたのか、といった点を明らかにしながら土地構造を捉え直す、という手法を用いています。
史料問題の対策を授業で扱う必要があると感じています。効率的に行うにはどのような方法があるでしょうか。
史料問題は既習史料(史料集などに掲載されているもの)と初見史料とに分かれます。既習史料については、空欄補充や下線部設問を中心とする知識系の問題が多いため、史料の精読を通じて史料中の人名・地名・年号(元号)などに注意しながら内容を確認するように心がけております。従って、既習史料については出来るだけ時間をとり史料に触れる機会を増やしております。また、初見史料については、補注や出典が明記されている場合はそれを手がかりとし、明記されていない場合でも史料を読み取りながら、何の出来事についての史料なのかを判断させるよう指導しております。
登場人物が多い近現代史は整理が難しく、苦手に感じてしまう生徒が多くいます。改善のためにはどのような指導をすれば良いでしょうか。
私の授業の場合ですが、まず明治初期の登場人物については為政者を明確にさせます。特定の藩出身者が多く登場しますので、藩名を併せて理解させるようにして、人物に関する情報を出来るだけ紹介することでより認識しやすくなるよう心がけています。内閣制導入以降は内閣総理大臣を軸とした理解をするよう指導しています。近現代史は前近代史と比べ、外交・経済史の面で政治史との関連が濃い内容が多いため、まずは時代を掴む“骨格”にあたる政治史の大まかな軸を明確にしながら、派生する外交・経済史について追いかけていくことで、より多角的な視点での理解が出来るよう心がけております。明治は藩閥出身者、大正は政党政治家と軍人、昭和戦前は軍人、といったように、内閣総理大臣を軸とする人物をハッキリさせ、複雑化する近現代史をあえてシンプルに捉えなおすことでアプローチしやすくなるよう心がけております。
文化史の授業が、一問一答的なものになってしまいます。先生はどのように文化史を指導していますか。
文化史は、多くの日本史選択者にとって苦手意識が最も高いテーマであり、私も講師を始めて以来文化史嫌いの生徒を多く見て参りました。原因を探ると、それはやはり情報量不足に帰結するのではないかと考えております。文化史は時代によりますが、各時代の“流行”であり、時代を最も如実に反映する“鏡”ではないかと思っておりますので、そうした流行が見られた背景、すなわち時代の特徴についての把握をします。その際、やはり各時代で知られている“時の権力者”が誰であったかを確認します。前近代史の桃山文化までの文化史では、“為政者=文化人”の公式が成り立つため、文化史に登場する用語を政治史との関連で理解するようにつとめています。江戸時代以降の近現代史では“為政者≠文化人”ですが、権力者の人物と弾圧された人物とに分けて把握するように指導しています。いずれにしても、情報量を増やし出来るだけ理解の肉付けになるよう心がけております。


福崎 伍郎
英語(2)
【8/4(日)実施】

福崎先生は二次試験の対策をどのように指導していますか。私が担当している生徒は、問われるポイントは理解しているのですが、現レベルの知識の不足(I was up to no goodが分からないなど)で苦戦しています。福崎先生はこうした一つ一つの表現をどのように指導されますか。また効率的に指導する方法はあるのでしょうか。
二次対策の中で取り扱うべき構文や文法事項の数はある程度限定されたものですが、単語や熟語・定型表現、コロケーションなどの表現となると、ここまで押さえておけば大丈夫ということはなかなか言えないと思います。教科書に出てきたものをまず確実に覚えさせ、それに定評のある単語帳(できれば熟語集)を加えて語彙力の強化を図ることを実践してください。例に出されたbe up to no goodなどの熟語的表現は、その意味の成り立ちなどをひもといていくと、興味深く記憶にも残りやすくなりますが、限られた時間の中では、逆に効率が悪くなってしまいます。単語や熟語は、できるだけ記憶に残りそうな例文を提示して、その中で覚えさせるようにされてはいかがでしょうか。
大学入学共通テストでは、リーディングの分量が多くなりそうです。普段の授業でどのように対策すれば良いでしょうか。
第2回試行調査の問題を見ますと、総語数は5000語を超えています。センター試験も4000語以上ありますが、共通テストはそれを1000語以上も上回ることが予想されるわけです。これは、発音・アクセント・文法・整序英作文などの問題がなくなり、リーディングに特化した試験になるために語数が増えざるをえないことに加えて、各問題でまず英語で状況を説明してから英文を読ませるという構成をとっているためにその分の語数も増えてしまうことが主な要因と考えられます。CEFR A1~A2レベルの問題は平易な英文ですので、授業でリスニング・音読・リピーティングなどを通じて、直読直解の練習を繰り返せば十分に対応可能だと思います。B1レベルの問題は、本格的な論説文や説明文が多いので、ディスコースマーカーに注目しながら論理展開を追跡する訓練が有効です。この読み方を習得させれば、二次試験の長文対策にも直結します。
受験生向けの夏期講習会を担当することになりました。過去問を扱う場合は、どのように教えれば良いでしょうか。時間配分やこの時期におさえるべきポイントなどについてもアドバイスをお願いします。
まだ入試本番まで数カ月を残すこの時期に、志望校の入試問題がスラスラと解ける高校生は稀です。ほとんどの高校生は、自力で過去問を解こうとしても、 あまりの難しさに手も足もでないのではないでしょうか。夏期講習会で過去問を扱う場合、私が最も重視するのは、出題者が何を意図してその問題を出したのかを明らかにすることです。出題者がゴールとして設定している力が何なのかをはっきりさせることで、これからの数カ月で取り組まなければならない課題を生徒に強く意識させることができます。そうすることで、やるべきことの優先順位が見えてきて、腰を落ち着けて受験勉強に取り組めるようになると思います。また、各大学が公表している出題方針を紹介するのも、受験に向けた意識づけに有効だと思います。
知識の定着を目的として、生徒に家庭学習を指示しようと考えています。福崎先生は生徒に家庭学習を指示するときどのような点に注意されますか。
知識の定着を目的とした家庭学習の場合、私がおすすめしたいのは、その知識を実際に使ってみることで定着させることです。たとえば、いくつかの単語を(使える)知識として定着させたい場合には、その表現を使った例文を最低3つは作らせます。その際に、生徒任せにするのではなく、こちらが事前に Oxford Collocation Dictionaryなどで調べて、該当する単語との組み合わせでよく使われる形容詞・副詞・動詞・前置詞などをプリント配布して、例文を作るときのヒントにさせると、生徒の負担を減らせるのと同時に、正しいコロケーションを踏まえた英文を作れるので、生産性の高い活動をさせてあげられるのではないかと思います。ご参考になれば幸いです。
英作文の添削を生徒からよく求められます。少しでも生徒を助けたいと思う反面、負担に感じる部分もあります。なるべく効率的にするにはどうすれば良いでしょうか。
英作文の添削は、正確さを期そうと思えば、辞書や参考書を参照したり、Googleなどで検索したりするなどの手間がどうしてもかかることになります。確かに、こちらとしても良い勉強になるので、長い目で見れば大変なプラスになるのですが、毎日の業務に追われているなかで継続することは並大抵のことではありません。また、生徒の書いた英文でも、完成度の高いものであれば、添削が必要な箇所も少なく、問題点をピンポイントで指摘できるので、生徒の求めるままに添削を引き受けてもたいした負担にはならないのですが、完成度の低いものは、問題のある箇所が多すぎて、それを全て添削した場合、生徒が提出した英文とはまったく違った英文が出来上がってしまい、何のための添削かわからなくなってしまうことがよくあります。つまり、そのような英文は、添削に適したレベルに達していないと言わざるをえません。添削とは、ある程度の完成度に達している英文に対して有効な指導なのです。では、完成度の低い英文の添削を頼まれた場合はどうすればいいでしょうか。私であれば、その問題の正解を提出させ、日本文から正解の英文がどのようにして作られたかを解説します。それをまず理解させた上で、生徒の書いた英文の問題点を口頭で説明して、自分の書いた英文を自分で添削させて再提出させます。そして、間違いのない英文になるまで、何度かそれを繰り返します。このようなやり方であれば、何回添削をしてあげても、一向に正しい英語が書けるようにならないという悪循環から抜け出し、少しずつですが、自力で正しい英文を書ける方向に向かっていけるのではないでしょうか。


湯浅 弘一
理系数学
【8/4(日)実施】

読解力や記述力を身につけさせる指導をしたいと考えています。特に理系ですと数学は得意でも、記述が苦手な生徒がいます。湯浅先生が重要だと思われるポイントを教えてください。
理系の生徒は計算力に優れている生徒と、論証に優れている生徒に分かれる傾向にあります。前者が私立向け、後者が国立向けです。ご質問の生徒は私立型であるが国立を目指しているケースと拝察申し上げます。具体的な指導は答案の下書きから始めます。いきなり答案を書かせないようにご注意ください。この類の生徒は短気な方が多く、答えを出すことに専念した短時間での解答を好むことが多いです。頭ごなしに言っても改善にはつながりませんから、できる限り下書きを褒めていき、清書をさせるようにしてください。1ヶ月くらい続けると、慣れてくるので拒否も無くなります。初めが大変ですので、先生も根気よく下書きのご指導をよろしくお願い申し上げます。
大学入学共通テストの対策について、どのような取り組みが有効かアドバイスをお願いいたします。
数学については、解答形式があまり変わりません。長文という言葉に惑わされるより今までのセンター試験が解けることが先決かと思われます。強いて申し上げますと、マークを埋めるのではなく、マークが埋まるように出題者の意向に沿った解答を作るようにご指導ください。60分に対して90分くらいかけて、ゆっくりやれば解ける!実感を持たせてあげてください。
数学を教えているのですが、恥ずかしながら自分の専門性に自信がありません。少しずつ高めていきたいと考えております。何かアドバイスをお願いいたします。
正直、私も自信がありません。高校の先生の方が知識も人生経験もあります。私はどこまでも予備校講師です。生意気申し上げますと、数学教育は数学を通して高校生の自己啓発を高めることにあると思います。高校時代の思い出・・・それが数学の授業だけでは悲しいですから…。数学の専門性だけなら先輩の先生方が教えてくださります。何より、生徒と一緒に活動すること。その一部に数学があると考えると、自分の数学の知識も増えていくものでございます。問題だけ解くならば先生という職業柄、量をこなせば解決されます。ただ、生徒は量をこなすだけでは伸びないと思います。問題文の理解とその解決することへの達成感が大事ですから。
最難関大志望の高3生を対象とした講習を週1で担当しています。教材用に頻出問題をピックアップしたいのですが、良い選び方・探しかたはありますでしょうか。また、そもそも頻出問題を大量に解かせるというのは、講習内容として適切でしょうか。湯浅先生、アドバイスをお願いします。
旧帝大系の数学入試問題を解説を丁寧にしてあげることが一番生徒を伸ばすことになります。見本を示すというイメージを持っていただければと思います。解かせることも大事ですが、単に解かせることだけでは、論理的にきちんとゆっくり考えることを妨げてしまう可能性があります。もちろん限られた時間の中ですから、50分間に1問だけ、問題の意味を説明して、どんな風に考えたか?第一印象、そして行動した後の印象。そして下書きを見せた後に生徒の様子から解法のアウトラインが確認できたら、清書へと進めていただけると良いでしょう。頻出問題はデイリー問題として扱うとよろしいかと思います。
湯浅先生は、入試問題を授業で扱う場合、何分ぐらい解説に時間を使われますか。生徒や問題のレベルによって、調整されていると思いますが、およその目安を教えていただけないでしょうか。
1問30分を目安にしています。大学別の授業では、問題に合わせて解説をします。私の場合、東大志望者向けの授業では、1問に60分かけることもありますし、医学部志望者向けの授業では1問を解かせて解説も含めて30分と決めていることもあります。解きながら問題に隠れている要素を発見させるときは時間をかけます。見つかるまで答えも言わないこともあります。逆に数学Ⅲの微分積分の計算作業がメインの問題(面積・体積・弧の長さ)を扱うときは短時間にしております。


望月 光
古文
【8/4(日)実施】

自分の古文指導がマンネリ化しているように感じます。何かアドバイスをお願いいたします。
マンネリ化・・・。むずかしい問題ですね。私も一頃それで悩んだ時期がありました。ただ、現在は必ずしもマンネリを気に病んではいません。文法などの知識整理は、ある程度同じことの繰り返しになってもしかたがないと思うからです。ただし、無感動な繰り返しにならぬよう、生徒たちの様子を見て、柔軟に対応するようにはしています。同じことでもクラスのメンバーによっては説明のしかたや例文をかえたり、極端な場合は、まったく違う内容を盛り込んだりするのです。自分の中に「型」をつくって、そこに生徒たちをはめこんでいくのではなく、生徒たちにあわせて「型」をかえていくということでしょうか。
担当している生徒たちは、古文を学ぶ意義に疑問を感じており、モチベーションが低い状況です。生徒たちに古文の面白さを実感させられる教材を探しています。何か望月先生のおすすめをお願いいたします。
「古文を学ぶ意義」がわからなければ、それはひとまず置いておき、とりあえず『源氏物語』にふれさせることにしています。生徒の学力によって、マンガをすすめることもあれば、解説書や現代語訳を紹介することもあります。『源氏物語』をすすめるときには、紋切り型に「これは日本文学史上の最高傑作だ」とか「物語文学の最高峰だ」と説明するのではなく、自分がはじめて『源氏物語』を読んだときの体験を語るようにしています。「現代の小説やマンガを読むときのように、本当にひきこまれた古典文学はこれだけだった」と率直に言うと、そんなにいうならちょっと読んでみてやるか、と生徒たちも思ってくれるようです。やはり教材は自分が本当に感銘をうけたものが最高なのではないでしょうか。
望月先生が教材を作る際に意識しているポイントは何ですか。特に試験問題作成の際のアドバイスをお願いします。
教材をつくる際は、(1)文学史の流れがつかめること、(2)読んでおもしろみが感じられること(あるいはこちらがいきいきと説明できること)、(3)その一本を読むことが今後の学習に有益であること、という3点を念頭においています。(1)は時代の流れとともに、各文学ジャンルがいきいきと生徒につたわる問題文を選ぶようにしています。(2)は現代性のあるもの。生徒たちの日々の喜びや悩みに密着した話ができるものを選んでいます。(3)は予備校ですから、やはり受験勉強として役立たないものをテキストに入れることはできません。試験問題をつくるときは、この(3)だけを念頭においています。
文法など基礎力を定着させるために、かなりの時間を費やしています。望月先生が文法や基礎力養成において、重要と考えるポイントを教えてください。
「文法」について、最近つよく思うことがあります。それは用言についてです。私ども予備校講師は、高校で先生方に学んだ生徒たちをお預かりしています。それで、いつも感謝するのが用言の項目です。これができない子はほとんどいません。どんな学力の子もほぼ輪郭がつかめています。高校の授業のおかげなのです。先生方が「かなりの時間を費やして」くださる基礎力の養成はまちがいなく成功しています。用言のできる子は、「やる気」がともなえば、助動詞→助詞→敬語と順調にマスターしていきます。どうかそのまま、いままでどおりのご指導をお続けください。「高校の勉強」に、生徒たちも後になって感謝しています。私ども予備校講師は、先生方のご指導の成果をどう効率よく発展させるか、それだけを考えて指導しています。
センター対策を授業中で行うと、生徒の関心は得点と正解に集中してしまい、文学的な内容には興味を持ってくれません。センター試験の過去問や練習問題をつかって、興味関心を喚起する授業をするにはどうすればよいでしょうか。
私はセンターの教材は扱いやすくおもしろいと感じています。まず、それ一本を読めば話がよくわかる、という点が重要です。私大が出題するものは、尻切れのものが多いように思います。つぎに、中学・高校の授業内容をきちんとふまえたものが多いこと。たとえば先日、『ねさめの記』(2005年センター試験本試験 国語I)というのを生徒たちと読んだのですが、学校で学ぶ『稚児のそら寝』をふまえて話すと、生徒たちもよく理解してくれたようでした。この教材は、(1)古典の表記、(2)古文読解の本質、(3)『源氏物語』の文学史的価値、などが指導できるうえに、「いじめ」や「人権」など現代の若者にとって重要な問題まで含んでおり、生徒たちも楽しく学んでくれたように思います。先生方がふだんなさっている授業とセンター古文の内容がどうかかわるか。そこに注目していただきますと、よりおもしろい授業になるのではないでしょうか。


佐藤 幸夫
世界史
【8/4(日)実施】

風刺画や映画を使って授業をしてみたいと考えています。何かおすすめの資料と授業展開の例を挙げていただけないでしょうか。
風刺画や映画の導入は、生徒に歴史的な事項を印象的に記憶に残すことのできるアイテムだと思っています。使用頻度としては、準備負担も考え、1週間に1・2回が良いかと思われます。風刺画を使用する場合は、風刺画の登場人物に吹き出しを付け、生徒に会話を考えさせるのが面白いでしょう。2人1組で考えさせて発表させると盛り上がるかもしれません。あまり、ヒントを与えすぎるとつまらなくなるので、「今日の単元」だけを先に教えていて、生徒の発表後に風刺画の歴史的な背景を解説するというのが良いでしょう。映画を使用する場合は、最初に「事件の背景」を説明してから、見せたい場面を5分程度×3ヵ所程度に絞り、鑑賞させるといいでしょう。その後、巻き戻して、部分的に止めながら歴史的な解説を付け加えていくと理解が深まります。。感動する場面や泣ける場面、考えさせられる場面を盛り込むと面白味が増すでしょう。
入試に出題されるかもしれない、時事的な内容をどのように解説すれば良いでしょうか。情報の取捨選択や提示方法についてアドバイスをいただければと思います。
まずは入試問題の研究から始める必要があります。時事的な内容を問題のリード文として使用しても、その知識自体は問わない大学入試がほとんどです(なぜかと言うと、時事問題を出題すれば、用語集に記載されてない用語を出題することが多くなるため、世界史という範疇を逸脱してしまうからです)。ただ、一部の大学の国際関係や政治経済系の学部などは積極的に時事的な問題を出題していますので、その大学や学部を受験する生徒のみ戦後史やテーマ史で扱ってあげれば良いと思います。とはいうものの、世界史講師としては、「時事には歴史あり」という自負は強いので(笑)、アラブの春からのシリア内戦、ブレグジット、ポピュリズムの歴史、NationalismとGlobalismの歴史などは、通史が一通り終了した後、〈テーマ史〉として扱っていくのも良いかと思います。これらは全て世界史の醍醐味ですから・・・。
授業に使える時間(=単位数)が減らされてしまい困っています。しかし、生徒のためにもなんとか一通り終える必要があるので、効率的に進めるためのアドバイスをお願いいたします。特に通史の進行ペースに関する目安をご教示いただけますと幸いです。
大切なのは年間計画です。私も含め、歴史の教師というものは、自分の好みや語りやすさ、古い出題情報で勝手に重要度を決めてしまいがちです。しかし、生徒の質や力、好みなどもここ10年で大きく変わりました。勿論、入試の頻出&重要単元も大きく変わりました。なので、再度、教授スケジュールを全体的に見直す必要があると強く思います。そして、そのスケジュールを予定通り進めるためには、その日の気分や雰囲気で授業を進めるのではなく、1回の授業を歴史物語として完結させることが最も重要になります。となれば、プリントを使った授業を行うのであれば、使用するプリント作成の段階で、完結できる授業を考えねばならないということです。つまり、1日で完結できるプリントです。これができれば、授業に幅とメリハリをつけるタイミングがつかめるでしょう。ちなみに、代ゼミの授業では、「通史」は48回×90分、「戦後史」は5~10回×90分、「文化史」は5回×90分、「テーマ史」の5回×90分をもって、1年間で全範囲を終わらせています。
史学を専攻しなかった教員です。資料集や本などで教材研究を行っていますが、どうしても文献資料をうまく活かせていないと感じています。何かアドバイスをいただけないでしょうか。
史学専攻の有無に関係なく、多くの方から文献資料を授業内で活かすことは難しいという声をよく聞きます。資料というものはあくまでも、「通史」を理解できた上で使えるモノですので、絶対に使わねばいけないものではありません。「授業のスパイス」として「深く理解させる」ために必要と思われるモノだけを活用すればいいと思います。ですので、書籍にある資料の半分は「自分自身が学ぶための道具」であり、半分が「生徒に教える時に使用するアイテム」だと思って良いでしょう。生徒に使用するモノは、入試問題を研究して、どう使用されているかを知り、授業内で扱うことが重要です。その際、授業の中に無造作に取り入れるのではなく、授業の「最初」や「締め」として紹介し、解説していくのがベストです(資料を見ることで授業の流れを止めない)。生徒には資料集を使わせますが、同じものを黒板に大きくして貼る、スライドで写すなど、生徒が前を見て授業ができる工夫をすれば、生徒の反応は良いでしょう。
学校で新カリキュラムを検討しており、他教科との合科目を考えています。何かおもしろい組み合わせはないでしょうか。
ご存じの通り、世界史は、「社会科」という教科の全体を取り扱っています(経済史・日本との関係史・哲学史・地形と歴史など)。なので、政経・倫理・地理・日本史の合教科は問題なく可能でしょう。世界史特有の「テーマ史」を使っての合科目も可能だと思われます。「疾病&医学の歴史」で〈生物〉と、「核開発と核軍縮」や「通信・情報の歴史(海底ケーブルや無線通信など)」で〈化学・物理〉と、「天文学の歴史」で〈地学〉との合科目を試みることはできるでしょう。その他、原文から歴史の真実を見つけてみるというテーマで、〈漢文〉との合科目として中国史、〈英語〉との合科目としてアメリカ史なども面白いですね。また、これは合科目と言えるかわかりませんが、〈小論文〉において世界史に関連したテーマが出題されることがあります。小論文の書き方や採点のポイントなどは専門外ですが、文章の落としどころや興味のポイントは〈論述〉という観点から〈世界史〉の出番だといつも思っております。